パタン。リビングのドアが閉まった。



唇に残った熱が、わたしの脳内を支配している。

あの瞬間を、唇が触れ合っていたあの数秒を思い出すたびに、李々斗の申し訳なさそうな顔がよぎる。



李々斗のバカ。人の話は最後まで聞かなきゃダメって習わなかったの。ごめんじゃないよ。


なかったことになんてできるわけないじゃんか。





――覚悟、しといてよ




李々斗が気持ちを伝えてくれた時、そう言ったから。

だからわたしも、もう逃げないで自分の気持ちに向き合おうって決めたんだよ。







「嬉しいって思っちゃったんだよ………、」






容赦なく唇から逃げていく​──…なかったことにできない熱が、ひどく恋しかった。