「うぅ~~…」
「ばか、そんなに擦ったら肌痛いだろ」
零れる涙をごしごしと拭うと、李々斗の手が伸びてきてぐっと阻止される。不意打ちの男の子の力に胸が鳴った。
やっぱりおかしいの、わたし。
李々斗にどきどきしちゃうのはなんでなのかな。
「…楓莉」
李々斗がおもむろに立ち上がり、じゃり…と公園の砂が音をたてた。
手首は捕まれたままで、立ち上がった李々斗に釣られてわたしも顔を上げる。秋に夕焼けに照らされた李々斗の顔は逆光で照らされていて、表情がよく見えない。
「…楓莉は俺のことわかんないっていうけど、俺は楓莉のことがわかんない」
名前を呼んだ声が、落ち着いた声色で言葉を紡ぐ。わたしが昔から知っている、やさしいトーンだった。



