「有村さんさ、大丈夫?」
「…、えっと、」
「成水と、最近あんまり喋ってないよね」
ぎくり、肩を揺らす。
「そんなことないよ」と、エプロンをほどきながらそう言うと、吉川くんはふうん、と短く返事をした。
「もう1週間くらいになる?」
「な、なにが?」
「成水が有村さんのこと避けてるの」
やだやだ、やめてよ。
言葉にされたら認めざるを得なくなるじゃん。
じわ…と目頭が熱くなったので、下唇をぐっと噛んで必死にこらえた。
李々斗とちゃんと顔を合わせたのは1週間前のこと───…わたしが、真っ黒で濃い線を引いたあの日が最後だった。