・ 「───急に呼び出してごめんね、ちょっと聞きたいことがあって」 人気(ひとけ)のない廊下まで歩いてきて、周りに誰もいないことを確認してから荻原くんが立ち止まる。 私もそれに合わせて足を止めた。 荻原くんはスッと振り返って、私を見透かすみたいに目を細める。 さっきまでの優しい笑顔が消えて、冷ややかな視線が私を刺す。 「昨日、見たよね?」 "見た" 何を見たのか、思い当たる節はひとつしかない。