「噂って?」
「ヤバい人たちとつるんでるらしいよ。夜の街を女連れて歩いてたとか、本当はバイク乗り回してるとか、喧嘩で何人病院送りにしたとか、いろいろ。
まああんなに優等生だから、ただのデマだと思うけどね。でもこういう根も葉もない噂ってどこから生まれるんだろうね?」
前の私だったら、荻原くんはそんな人じゃないよ!って言っていただろう。
だけど今はそんなこと言えない。
きっと全部本当なんだろうなって、思ってしまうから。
煙草を吸う横顔は、私の知らない荻原くんだった。
冷たくて、だけど背筋が凍るように綺麗で。
いつもの王子様の姿なんて少しもなくて、纏っている空気すら危険で。
そしてどうしようもなく、美しくて。
生徒会長の荻原くんが太陽なら、本当の荻原くんは月だ。
真っ暗な夜空の中で、絶対的にひとつ、輝いているもの。それがきみだった。
根も葉もない噂なんて、根も葉もあるところからしか生まれないんだと思う。



