「じゃあ、」
まだ聞こうとした私を、荻原くんの冷たい声が制す。
「永島さんは、知らないほうがいいよ」
生徒会室に先に戻って行く彼の背中を呆然と見つめる。
ドクンドクンとうるさい心臓。
心の奥から溢れてくる熱。
"近付かないほうがいい"
喫煙所で彼を見かけた時から、彼が普通の高校生ではないこと、なんとなくわかってしまった。
空気感が、全然違った。
これ以上知らないほうがいい。
今まで通り、王子様のきみに憧れるだけにしたほうがいい。頭では十分わかってるのに。
それなのに、立ち入り禁止の黄色いテープを破って、きみの中に入ってしまいたかった。



