「でもあんたそれ、人に物頼む時の態度?」
愛海が冷たく言い放つ。
「ちょっと愛海!いくらなんでも──」
「祐美は黙ってて!これは、そいつと私の問題なんだから!」
あくまで圭子をねじ伏せたいらしい。
「もっとちゃんと頼みなよ!サプリメントにして下さいって、床に手をついてさぁ。あんた、ただでさえ馬鹿みたいにデカいんだから」
「ぐっ…!」
愛海の言葉に、唇を噛み締めている。
ここはグッと堪えて、愛海に『サプリメント』と言ってもらわないと。
またいつ【り】が来るか分からない。
その時のために『りんごタルト』は残しておいたほうがいい。
だから圭子、お願いだから辛抱して!
けれど私のそんな願いは、愛海の一言で粉々に砕けたんだ。
「ほら!そこの男女!早く土下座しろって!」
「だ、誰が!誰がお前みたいなクソ女に頭を下げるもんか!」
「へぇ、いいんだ?」
「勝手にしなよ!あんたに土下座するくらいなら、私はここで死ぬから!」
「じゃ、死ねよ」
驚くほど冷たい声で言った愛海が、サプリメントを手のひらに乗せた。
チラッと横を見ると、圭子がわずかにほくそ笑んでいる。
憎たらしい愛海にやり返すことができるからだ。
でもまだ笑うのは早いんじゃ──?



