「ねぇ、どっちがいーいー?」
ねっとりした口調で、圭子にそう尋ねる愛海は心の底から楽しそうだ。
か弱い動物を痛ぶるかのように。
『サプリ』も『サプリメント』も同じ意味だ。
ただ、終わる言葉が【り】か【と】の違いがある。
もし【と】なら『とびら』や『とって』など、いくらでも思いつく。
でも【り】なら…。
「ねぇねぇ、愛海にどっちを言ってほしいー?」
「それは…」
圭子が口ごもる。
本当は【と】で終わらせてほしいけど、愛海が気づかないだけで、私たちは『りんごタルト』を見つけてある。
「圭子」と、私は腕を突っついた。
ここは我慢して【と】で終わらせたほうがいい。
またいつ【り】を投げ込んでくるか分からないから、タルトはその時に備えておいたほうが…。
私の考えが通じたのか、圭子が小さく頷いた。
「で、できれば…サプリメントだと、有り難い」
それだけ言うのも、声が怒りで震えているのが分かる。
圭子としては、愛海なんかに頭を下げたくないんだ。
それを我慢して、ちょっと笑顔まで作って頼み込む圭子の胸の内は、怒りで煮えたぎっていることだろう。
「サプリメントかぁー」
愛海がにっこり笑う。



