「なんとかゲームから抜けないとな」


真面目な顔で、祐希が言った。


「うん、そうだね」


「良一のためにも」


そう話す祐希の横顔は、とても柔らかい。


友達思いで暖かくて、私のよく知っている祐くんそのものだった。


「そういえば、死り神は人間なの?」


気になっていたことを尋ねた。


祐希にタックルされたり、圭子にコテを決められて呻き声を上げていたはず。


「確かに生身の人間の感触があったな」


「もし倒せば、殺されなくてすむの?」


深く考えず口にした私の問いかけに、祐希は顔を険しくする。


「これはただのゲームじゃない。倒すっていうことは___殺すっていうことだ」


「殺す…」


「それができるか?」


真剣な眼差しに、私は首を振るしかなかった。


私に殺せるわけがない。


「でも安心しろ」


「えっ?」


ベンチから立ち上がった祐希を見上げる。


「俺が祐美のこと、守ってやるよ」


私のことを見ることなく、祐希が言った。


私を守ると。


「祐くん…」


「幼なじみのよしみでだよ」


そう言い残すと、そのまま私を見ずに軽く手を上げて行ってしまう。


私はその大きな背中を、見えなくなるまで見送っていた…。