「いつも愛海のこと小馬鹿にして!」


「違う、馬鹿にしてるの」


「なによその言い方!」


怒った愛海が圭子に掴みかかろうとした時、椅子の上でバランスを崩した愛海がグラリと揺れる。


あ、危ない!


ガシャん!と派手な音を立てて、愛海が床に尻もちをついた。


『クリアです!』


えっ、クリア?


「うそっ、やだっ…やだ!」


立ち上がった愛海が、お尻を確認してけたたましい悲鳴を上げた。


「あ〜あ、可哀想なゴキブリ」


圭子がボソッと言った。


「とりあえず良かったな!次、俺の番。えーっと【り】から始まるやつか」


良一が教室の中を見回す。


と突然、教室を飛び出していった。


私たちが慌てて追いかけるとすぐに【音楽室】に入る。


「はい、リコーダー!」


『クリアです!』


「次、私だよね?」


圭子はそう言うと「だあ、だい、だう…」と呟き始めた。


そうやって【だ】から始まるものを探っているんだ。


すぐに圭子は教室に戻った。


後ろのロッカーから「ダウンジャケット」を取り出す。


『クリアです!』


次の祐希が「と」と呟くと、真っ直ぐに私を見る。


えっ、なに?