「愛海…どうかしたの?」


「なにが?」


「なんかいつもと違うし」


私がそう言うと、愛海は視線を外して黙り込んだ。


やっぱり何かおかしい。


圭子が死んだことの責任を感じてる?


少しでも悪いと思ってる?


「…なんで私だけ」


小さな声で、愛海が口にした。


「えっ、なに?」


「なんでいつも私だけ」


その声色は、とても憎々しい。


再び目が合った時には、私のことを睨みつけていた。


「転校するから」


「転校?」


「そう。祐美の清々するでしょ?うっとうしい奴が居なくなって」


「なんで急に?」


「離婚するから」


「離婚…」


思い当たることがあった。


愛海の家は、夫婦仲があまりうまくいっていないと愛海本人から聞いていたんだ。


父親は愛人がいてほとんど帰ってこず、母親も家事をすることなく、いつもコンビニ弁当だと言っていた。


「どっちについていくか、自分で決めろってさ」


だから投げやりな物言いなんだ。


「愛海、どっちにするの?」


「父親となら生活に困らないけど愛人いるし、母親となら生活保護確定だよね」


どこか他人事のように、薄っすら笑う。


雨は、さらに強く降っていた。