「それお見舞いの品です。玲ちゃんなにが好きかわかんないから、とりあえずエクレア買ってきた」
「私は甘いものが大嫌いだ」
袋には二つエクレアが入っていて、いかにも甘そうなチョコレートが上にかかっている。
私はそれを二個とも取り出しひとつを佐久間に渡す。
佐久間は肩を落とし悲しい表情をしていた。
「ごめん。そうとは知らずに。二つとも持って帰るよ、次来る時は違うの……」
「別に、食べないとは言ってないだろう。ひとつはお前が食えば良い」
私は佐久間の言葉を遮って、おもむろに袋を開けて一口、二口とエクレアをかじる。
口いっぱいに底知れない甘さが広がった。
これを一言で表現するならば、ゲロ甘いだな。
「次は甘すぎて死にそうだ」
「無理して食べなくても良いのに……変な人〜」
佐久間は笑って、自分の分のエクレアをおいしそうに食べた。
私とこの人たちでは食べているものが違うというのは、それほど検討外れでもないのかもしれない。
甘いものを美味しく食べる人が、まるで幸せの真ん中にいるみたいな表情になれるのなら、私も……。
なんというアホらしい考え。私は可笑しくて心の中で笑った。



