綾川くんが君臨する


さすがに聞いてられなかった。


「綾川くんいい加減にして!」


ふたりのあいだに割り込んで、おもいっきり叩いた。綾川くんのほっぺた。


「……痛った」

そう言って薄く笑う綾川くん。

対するユナちゃんは、ぼろぼろと大粒の涙を流していて。
それからすぐに両手で顔を覆って、嗚咽まで上げ始めてしまった。


もうどうしていいかわからない。

おろおろとふたりの顔を交互に見ていると、やがてユナちゃんが逃げるように背を向けて去っていった。


いつの間にか教室には、わたしと綾川くんのふたりだけになっていた。


「………今のなに? わたしの味方をしてくれたつもりだったとしても、あんな酷い言い方ありえない……。お礼なんて言わないからね」

「味方? 違う違う、手っ取り早く女を泣かせたかったところに、あれがたまたま都合よく現れたってだけ」

「……? え、……??」


今、なんて言ったこの人。
手っ取り早くオンナを……泣かせたい……?


「あー、これでようやくはっきりした。他の女じゃそそられない」


投げやりにそう言った綾川くんの指先が、ふとわたしのほっぺたを捉えた。


「やっぱり俺は黒鐘じゃなきゃだめなんだよ」