綾川くんが君臨する


あの日……。

ユナちゃんに放送当番を代わってほしいと言われたあとの記憶がずっとあいまいだったけど……。

そうだ。わたしは綾川くんと放送室に行ったんだ。
それから、倒、れた……?


また霧がかかってはっきりとは思い出せない。

だけど、綾川くんの言うとおり倒れたんだとしても、ユナちゃんが責任を感じることじゃない。


「ユナちゃん気にしないでっ。そこまで重症だったわけじゃないし、寝たら治ったし……ほら、この通り元気なので」


それでも青ざめたままのユナちゃんに、綾川くんが追い打ちをかけるように冷たい目を向ける。


「ていうかこのマフィン、市販のやつを袋に詰めただけじゃん。なにが“感謝の気持ちを込めて焼きました〜”だよ」

「……っ、」

「おいおい逃げんなって。そもそも、先輩に当番代わってもらっておいてそんな安い態度でいいわけないだろ。マフィンなんか渡して、あわよくば今後も代わってもらおうって魂胆が見え透いてんだよ、気持ち悪い」