綾川くんが君臨する

でもここに、綾川くんまで入ってくると話が違ってくる。


「そうなの、黒鐘」


青ざめるわたしの思考を遮るように、綾川くんが低い声を出した。

わたしに触れる指先に、たしかな力がこもる。



「……、え?」

「お前は風間が好きなの?」


またしても教室中にどよめきが湧き起こった。

わたしたちの手は、まだ重なったまま。



綾川くんのこといい加減諦めたい。そのきっかけを、もうずっとずっと探してる。

それに、今はみんなの目がある。

火に油をそそぐようなこと……したくない。



「す、……好きだよ、少なくとも、意地悪な綾川くんよりは」



みんなに聞こえる声でそう言った。

言い切ったあと、上手く息が吸えなくて、少しめまいがした。


そのまま一歩身を引くと、綾川くんの指先はあっけなく離れて。


直後、チャイムが休み時間の終わりを告げた。