「ねーねー、おーい綾川ー!」
綾川くんを中心とした男子グループが一斉にリカちゃんを見る。
みんながいる教室で異性の集団に向かって声を掛けられるその度胸。
まことにすごすぎるんだけど、今は感心してる余裕なんてない。
視線は斜め下。
リカちゃんの腕を掴もうとして間に合わなかった指先を拳の中にぎゅっと折り込んで、ハラハラと次の展開を待つ。
「綾川にちょっとお願いがあるんだけどさー、」
「やめとけリカ。今日の綾川キゲン悪いから」
返事をしたのは綾川くんではなく、綾川くんとよく一緒にいる杉島くん。(の声だ、たぶん。)
「そんなの知らんし。綾川ぁ、さあたんのために今日の放送当番代わってあげてよー、帰宅部だしヒマでしょ」
ドクン、ドクン、ドクン。
心臓が3回動くのを聞いたあと、思い切って、少しだけ視線を上げた。
視界のぎりぎり、綾川くんの胸元あたり。
頬杖をついている。シャツのボタンは今日もきっちり、一番上まで留まっている。
「当番ね、考えてやってもいいよ」
え、と小さく声が出た。
「黒鐘が、その足で直接おれのところに頼みに来るんだったら」
綾川くんを中心とした男子グループが一斉にリカちゃんを見る。
みんながいる教室で異性の集団に向かって声を掛けられるその度胸。
まことにすごすぎるんだけど、今は感心してる余裕なんてない。
視線は斜め下。
リカちゃんの腕を掴もうとして間に合わなかった指先を拳の中にぎゅっと折り込んで、ハラハラと次の展開を待つ。
「綾川にちょっとお願いがあるんだけどさー、」
「やめとけリカ。今日の綾川キゲン悪いから」
返事をしたのは綾川くんではなく、綾川くんとよく一緒にいる杉島くん。(の声だ、たぶん。)
「そんなの知らんし。綾川ぁ、さあたんのために今日の放送当番代わってあげてよー、帰宅部だしヒマでしょ」
ドクン、ドクン、ドクン。
心臓が3回動くのを聞いたあと、思い切って、少しだけ視線を上げた。
視界のぎりぎり、綾川くんの胸元あたり。
頬杖をついている。シャツのボタンは今日もきっちり、一番上まで留まっている。
「当番ね、考えてやってもいいよ」
え、と小さく声が出た。
「黒鐘が、その足で直接おれのところに頼みに来るんだったら」



