𖤐ˊ˗
𖤐ˊ˗


「さあたん、今日ずっと顔しんでるー……だいじょーぶなの?」


リカちゃんの不安げな声によって、ぼんやりとさまよっていた意識がふと現実に戻った。

……う、嘘でしょ、あのリカちゃんが心配してくれるなんて。……わたし、それほどヒドい顔してたのか。

昨日の光景が頭の中で延々とリピート再生されている。もう見たくないよ、ウンザリ。記憶消しちゃいたい。

あの女の人誰だったんだろう。

あの人の隣を歩く綾川くんの姿も、わたしを見る冷たい目も、ぜんぶがまったく知らない人みたいだった。


「だいじょーぶ、……では、あんまりない、」

「よね。よし、今日はリカの担当がいるお店に一緒に行こっか!」


リカちゃんの担当さんがいるお店───……


「って……、メンズコンカフェ?」

「そ」

「……えっと、もしかしてメンタルケアしてくれようとしてる? あ、ありがとう、でも今日は放送当番なんだ〜……」

「は、うざっ。却下却下、放送当番なんかやらせてたまるか、交代要員探そ」


そう言っておもむろに教室を見渡したリカちゃんの動きが、ピタリと止まった。


「……そ〜いえばたしか、先週の下校放送、ウワサでは綾川がやってたって……」

「っ、!」


嫌な予感がして思わず立ち上がったときには、リカちゃんのつま先は既に“そっち”に向いていた。