綾川くんが君臨する


高級ブティックのエントランス付近。

ゴールドに輝く重たそうな扉から出てきた綾川くんは、スーツを着ていて。
その隣には綺麗なドレスを着た女の人がいて。

綾川くんは彼女の腰を抱いて歩きながら、脇に停まっている高級車まで慣れた様子でエスコートしている。


まるで映画のワンシーン。

撮影用のカメラでもあるんじゃないかと、思わず周囲を見回したけど……残念。

これはフィクションではないみたい。


そのとき、綾川くんの目が不意にわたしを捉えた。

驚く素振りは一切なく、ただ冷たい視線を投げかけてくるだけ。

次の瞬間にはあっさりと逸らされた。

私の存在なんか、最初からなかったみたいに。


指先からゆっくりと体温が失せていく。



さっきまで玉座からわたしを見下ろしていた綾川くんは、もういない。