……もうむりだよ。
難しいことわかんない。

ただでさえ熱があったのに綾川くんのせいで上がっちゃった。


鼓動はバクバクだし、体はだるいし、重心が迷子になったみたいに世界がぐるぐるしてるし。

自力で立ててるのが不思議なくらい……。

とか思っていたら、わたしはいつの間にか綾川くんの腕の中に倒れ込んでいた。



「もう限界? もっと無様な姿見せてくれてもよかったのに」


意識が本格的にもうろうとし始めて、いじわるな綾川くんの声も……どこか遠くで聞こえる。

いじわるを言うくせに、わたしをしっかりと抱きとめてくれる腕の感触がある。


………あったかい。

なんだかひどく安心して、自然と肩の力が抜けた。
素直に身を預ければ、すき間を埋めるように、さらに引き寄せられる。


「……おれのことは生殺しですか」


意識が途切れる寸前、そんな声が聞こえた気がした。


「ほーんと都合のいいサイアクな女」