「っや、違う今のは────んっ」
言葉は相手の唇によって遮られる。
タイミングこそ強引だったのに、そのキスは妙にじっくりと丁寧で。
戸惑っていると、その隙を突くようにして舌が入り込んできた。
「んぅ……、や、ぁ」
「黒鐘の口ん中、さっきよりあつい……」
「っ、うぅ、」
「熱あがった? やばいな早く休まないと」
休まないとなんて言いながら、休ませる気ゼロ。
代わりに俺に移していいよって言うみたいに、一度離れたかと思えば、またすぐに重なって絡めとられる。
距離はとっくにゼロなのに、さらに深いところまで求めてくるから。
やり方もろくにわからないけど、せめて応えようと、無意識にその身を委ねてしまっていた。
「……黒鐘が従順だと調子狂うな。俺にとっては好都合だけど、ぐちゃぐちゃにしても後から文句言わないでね」
さっきまで冷たかったはずの綾川くんの指先は、たしかな温もりを灯している。
私の綾川くんへの気持ちが移ったみたいで、この瞬間だけでも同じになったみたいで嬉しくて。
ひとまず熱のせいにして綾川くんの背中に腕を回してしまえば、少し間を置いたあと、小さなため息が聞こえた。
「抵抗しないなら、お前がだめって言うまでしようかな。……ほら、もっかい」
「っ、んぅ……」
「ん、……きもちいーね……」
その瞬間、ぞくりと甘い刺激が走って。
「俺ともっと気持いいことする?」
同時に、生理的な涙がじわりと溢れた。



