ふと、綾川くんがわたしの頬に触れた。

温度の低い指先が、火照った肌の上をゆっくりとすべる。


わたしの意識が、世界が、だんだんと綾川くんだけになっていく。
まるで暗闇に引きずり込まれるみたい。


「逃げるなら今のうちだけど」


耳元でくすっと笑われる。


ひどいよ。逃げられないように完全に追い詰めておいて、そんなセリフ。


ぐらぐら、ぐらぐら。
揺れる理性はもう限界。

頭もとっくにぐちゃぐちゃ。
たぶんぜったい熱のせい。



「もっ、するなら早くして……っ」


とんでもないことを口走った。

……と、気づいたときには、ときすでに遅し。