「草取り手伝ったから、お前のカラダ、おれの好きにしていい?」
一度目より幾分わかりやすく言葉数を増やして説明してくれるけど、……えっと、そういうことじゃない。
「えっ……と、何がどうなったら今の発言にたどり着く……」
「この前、お前と風間が事故チューしてるの見たとき」
「し、してない、っ、唇ぶつかってない、」
「なんか、体がさーって冷たくなって、頭も働かなくなって」
「………」
「周りに人間がいなかったらおれは感情に任せて……──、してたかも」
そのとき風が吹き抜けたからなのか、綾川くんが意図的にトーンを落としたからなのか、聞き取れなかった。
「あの、もう1回言ってくれないですか」
「黒鐘の体ぜんぶおれの好きに使ってやる」
「はぇ? い、いきなり断定口調……」
「一生こき使って、他の奴から見向きもされないくらい使い倒してやる」
すると、とつぜん手袋を投げ捨てた綾川くんの指先が、わたしの顔の輪郭を捉えた。
「だからもうおれから離れちゃだめだよ」



