綾川くんが君臨する


ひとりあたり、あと半径50cmくらいで草は抜け切ってしまいそう。

草が減るたび、綾川くんがちょっとずつ左にずれてくる。

わたしもちょっとずつ右にずれていく。



なんか、距離、すごい近い……。


じんわり、ほっぺたに赤みがさしていくのがわかる。

ちょうど夕陽がビルの隙間から差していて助かった。



「暗くなる前に終わりそうだね、ありがとう綾川くん」



今度こそちゃんと目を見てお礼を言うんだ!と右を向いたのに。

相手の顔は逆光でよく見えない。



「黒鐘の体、好きにしていい?」


──それは、唐突に。

なんの脈絡もなく放たれたので、しばしぽかんとするしかなく。