綾川くんが君臨する


「お、礼って言われても、ええと、カフェでドリンク一杯ご馳走するくらいしか」

「いや。黒鐘のその身ひとつあれば十分」

「?、 ほーん……じゃあ、お願いします?」



またよからぬことを企んでいそうだなと嫌な予感がしつつ、
手伝ってくれるのはシンプルにありがたいし受け入れることにする。

草取り自体は苦痛じゃないけど、ひとりだとなんか惨めに感じてきちゃうもんね。



「じゃあですね、綾川くんはあっちの端っこからお願いしていいかな」

「はぁい仰せのままに」


隣で立ち上がる気配がする。
最後まで目は見れなかった。


「そうだ、これ使いな」


声とともに、何か白いものが土の上に落下した。

これって……。


「軍手?」


お馴染みのごわごわしたものじゃなくて、きめ細やかな綿で作られているソレは、軍手というより手袋に近い。

そう、ドラマとかで執事さんがはめてるやつみたいな。