綾川くんが君臨する


相手が言うように、オバケでも見てる気分、だよ。


「ま、マージャンしに行ったん、じゃ」

「麻雀ね。好きなんだけど、中学の時にやり倒したから今さら素人とやってもつまらんし」

「…………」



素人とやってもつまんないレベルになるまで麻雀をやり倒す中学生、容易には想像できないけど。

ひとまずそれは置いといて。



「なんで、花壇に……」

「麻雀より、ひとり寂しく泥だらけになってる黒鐘を笑いに行くほうがおもしろいかなって」



そんなことを言いながら、綾川くんはわたしの隣にふわっと腰をおろした。

ムスクみたいな上品な甘い香りが鼻をかすめて、どき、とする。


どう、しよ、う。

この人はからかいに来ただけなのに、体中の血液が滾ったみたいに熱くなる。


まずい、動揺しすぎてる。

カマで無造作に土をほぐすばっかりで、全然草が取れてないのがいい証拠。



「悪趣味っ、帰って」

「うそうそ。最初から手伝いに来たんだよお前のこと」

「っ、え」


見れば、綾川くんもカマを持っていた。

うそ、本当に?


でも、にこ、と笑う顔が妖しく見える。

のは、気のせい……



「その代わり、お礼はきっちりもらうけど」


──じゃ、なかったみたい。