綾川くんが君臨する

𖤐ˊ˗


「リカ草取り手伝えなーい。だって担当に『今日お店行くね♡』って約束したんだもん」


──終礼後の教室にて。

覚悟はしてたけど、実際に断られればやっぱり落ち込む。


リカちゃんが帰宅部な理由は、メンズコンカフェの担当さんとやらに貢ぐため。

週に1回のペースで通ってて、それ以外の日のほとんどをバイトに当ててるリカちゃん。

バイト代はもちろんその担当さんの懐へと消えていく。



「そっかあ。楽しんできてね」


泣く泣く背中を見送った。

週1の楽しみを草取りのお手伝いごときで奪うわけにはいかない。

言うなれば、好きな人に会える日、ってことだもんね。



「綾川ー、今からこのメンツで麻雀しに行くんだけど来ねえ?」


教室の片隅。
その名前に無意識に反応してしまうのがつらい。


「麻〜雀? 楽しそー」


好きな人の乗り気な声を聞いたのを最後に、わたしは花壇へ向かうために教室を出た。