はあ、ふう……と呼吸を落ち着ける。


わたし、また流されて……。

飛ばしかけた理性を必死の思いで寄せ集めて、再び重なりかけた唇の間に、自分の手を滑り込ませた。



「……邪魔なんだけど」


イラッとした感じで言われて、ドキッてしちゃうの、ほんとにどうしようもない。

どうしようもないくらい好きだからこそ、軽々しくキスされるのが……嫌なんだもん。



頭が時間をかけて冷静さを取り戻す。


そうだった。

綾川くんは、泣いてる顔を見て、『もっとぐちゃぐちゃにしたい』って言っちゃうような、とんだカギャク趣味の持ち主だった。


泣いてるとキスしたくなるって言ってたもんね。

つまりは、今のもそういう趣味の本能(?)を煽っちゃっただけにすぎないんだよね。



「二度とわたしで遊ばないで…、…っ」

「……そっちだって気持ちよかったくせに」

「〜っ、もういい、バカぁ!」


今度こそ背を向けて放送室へダッシュする。



「あーあ……、まーた傷つけちゃった」



低く落とされた声には


「……忘れさせる手段、これしか思いつかなかっただけだよ」


気づくはずもなく───。