綾川くんが君臨する


ばくばくばく、わたしの心臓は条件反射のごとく激しく稼働する。

だって、綾川くんが放課後に放送室に入り浸っていること、リカちゃんにすらまだ言えてないんだもん。


綾川くんに脅されてるから。

『口外したら──すぞ』って。



「あ、綾川くんは授業もへーきでサボる人だから、当番はもっとサボりそうだし、向いてないかなあ〜……みたいな」

「アハハ言えてる。じゃあしょうがないねぇ、あとは頑張って〜」


あっさり納得したリカちゃん。

なんとか笑顔を保って見送るわたし。


その姿が見えなくなって、ふう、とひと息ついたときには

──教室にはひと気がなくなっていた。



ギ……、と椅子を引いて、うしろで誰かが立ち上がる気配がする。



「あーあ、黒鐘とふたりきりになっちゃった」



どこか不穏な響きを交えた声は、不機嫌バージョン時の綾川くんのソレに、間違いなかった。