綾川くんが君臨する


悲鳴にも似た騒ぎを、どこか遠くで聞いているような感覚のまま、

キーンコーンと予鈴が鳴る。


間もなく入ってきた化学の先生が「なんだァこの騒ぎは」とげんなり顔をしかめた。


それから授業が始まって、呪文のような熱化学方程式の解き方が右から左に流れてゆき──────


………気づいたときには、放課後になっていた。


「咲綾、今日も当番だったよね?」


すでに帰り支度を終えたリカちゃんに顔をのぞきこまれて、はっ、そうだった、と思い出す。



「なかなか一緒に帰れなくてごめんね、リカちゃん」

「全然いいけど、咲綾って当番回ってくるの早くない?」

「うぅ、放課後の人手が足りてなくて……。放送委員のほとんどが部活生だから」



うちの学校は部活動がお盛んなので、わたしみたいな帰宅部は放課後になにかと仕事を押し付けられがち。


「だったら暇な人間引っ張ってくれば? 例えば〜そうだ、綾川とか」


あやつ帰宅部だったよね?と、リカちゃん。