綾川くんが君臨する


「ねえねえ風間のことどう思ってる?」

「え?あ、」

「ぶっちゃけ初チューだった?」


にやにや顔で、次から次へと質問攻め。


視界の端に、窓際の席で友だちと談笑している綾川くんを捉える。


無視してそのまま席に向かうつもりだったけど、これは誤解を解くきっかけになるのでは ……と思い直して。



「そ、そのことなんですけど───」

「あれ? なんの話ー?」


わたしのあとから化学室に入ってきた人に遮られた。

よりにもよって、それが風間くんだったりする。



「ちょーどお前の話してたのよ。硬派なのが風間のウリなのに、事故チューでスキャンダル出ちゃって可哀想になあ」

「あははっ、スキャンダルって大げさな」


「まじまじ、学校中の女の子が騒いでんよ?」

「そうなの? オレは噂になっても構わないけどねー、黒鐘さんのこと(面白くて)好きだし」



わたしが誤解を解くタイミングを必死で伺っている中。

風間くんは、にこーっと笑いながら──とんでもない爆弾を落としたのだった。