𖤐ˊ˗



「ねえ、綾川くんてさ……」

「なーに黒鐘」

「元カノ20人いるってほんと?」



──放課後。

今日も今日とて、放送室のふわふわソファにだらりと伸びている彼に、問うてみた。

そしたらそしたら、相手は、こてん、と首を傾げて。



「そんなの、おれに聞かれても」

「は……えぇ? 自分のことでしょ?」



──この前、たしかに唇と唇が触れた。


こちとら思い出すだけで全身あっちっち、顔を合わたら気まずさと恥ずかしさのコンボで逃げ出したくなるのに。


綾川くんときたら、憎たらしいくらいいつもと変わんない。


あっちも気まずいよね、もう放送室には来なくなるかも……。

とか思ってたのに、そんなことはなかった。



キスしたのに、どーしてそんなに平然としていられるのか。


推測するに、答えは……。

単純に、“慣れているから”。