綾川くんが君臨する


「強がってないでエレベーター乗れば」

「いらない、おせっかい! ていうか生徒は原則使用禁止なの知らないの?」


「知らねえよバカじゃねえのこういうとき使わんでいつ使うんだよ」

「う、え、なんで急に言葉荒くなるの」


「咲綾ちゃんが、」


不自然に言葉が途切れる。

卑怯だと思う。明らかに勢いをつけてなにか言おうとして、黙り込むなんて。

なに。わたしが、なんなの。


綾川くん、今、わたしにどんな感情を向けてるの。
わたしといるとき、いつも、なにを考えてるの。

わたしのこと、……どう、思ってるの。


気になって気になって、夜眠れないくらいに考え込んじゃう日が何回もあった。


今、振り向いたら、そこに答えがあるかもしれない、なんて。

だめだめ、足を止めるな。
そんなことあるわけない。


だって、秘密で塗り固めたような男の子、だから。

こっちから手を伸ばせばするりと避けて、心までは絶対に触れさせてくれない……───


「っ、わっ……?!」

突然、フワッと胃が浮いた。

それとほぼ同時に、自分が足を踏み外したことを理解する。


どうやらいつの間にか、階段に差し掛かっていた……っぽい。