綾川くんが君臨する



「……綾川くん、もうみんな帰ったけど」

「うん、見たらわかるよ」


「……綾川くんは帰らないの?」

「黒鐘が痛みに耐えてる姿、もっと見てたいなと思って」



教室の後ろ。ロッカーに寄りかかってほくそ笑んでいる。

ほーら、おれの言ったとおり、って。

この人には、どうやらバレバレみたいだ。


わたしのことなんてどうでもいいくせに、カギャク趣味だから、都合よくここぞとばかりに構ってくる。

ほんとに……きらい、……嫌い。



「そんな足で帰れんの?」

「帰れ……る、お母さんに電話して、迎えに来てもらうから」


「だとしても、廊下は歩けんの? 階段は?」

「大丈夫だよそのくらい」


「あーそう、じゃあ行きなよ。言っとくけどおれは手貸さないからね、保健室に行けって言ったの無視したおまえが悪い」

「っ、言われなくても誰が綾川くんなんかに」


キッとにらんで、カバンを手に取った。

一歩踏み出すと、さっきの比じゃない痛みが襲ってくる。

それでもなんとか歩き出すと、綾川くんはゆっくりとあとをついてきた。


悪趣味……悪趣味! 悪趣味!!