「ただいま」




「おかえりなさいっ!」




扉を開けると、パタパタと彩梅の足音が響く。




軽くキスするだけで、



ほんのりと頬を染める彩梅を両手で抱き寄せる。




すると、ふわりとシャンプーの香りがして、



どくん、と心臓がなる。




なんていうか、すさまじい勢いで、



予想していなかった支配欲が満たされていく。




好きな女が自分のTシャツ着て、



普段見せない生足を俺だけに見せて、



自分と同じシャンプーの香りがするとか、



ちょっとやばすぎる。




仕事がひと段落してPCから顔をあげると、



隣に座って本を読んでいる彩梅の左手が、



俺の服のすそをつかんでいる。




多分、彩梅は無意識。




家で仕事をしていると、



気がつけば隣に彩梅が座っているようになった。




目が合うと照れたように笑って、手もとの本に視線をもどす。




背中にこつんと彩梅の額がぶつかったので、振り向くと。




「ちょっとだけ、充電です」




はにかんで笑う彩梅は、かなりヤバかった。




気がつけば、背中に寄りかかって甘えてきたり、



肩にもたれてきたり。




彩梅が近くにいると、



甘いバニラみたいな香りに包まれる。




頭をなでると、目をつぶって幸せそうに笑う彩梅は、



やっぱり、ちょっとだけコタロウに似てる気がする。




じゃれてくる彩梅が可愛すぎて、



気が付けば書斎じゃなくてソファで仕事をするようになっていた。