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あれ以来、彼女は積極的に古茶くんに近づいている。
健気なアプローチも、あの会話を聞いたあとだと途端にわざとらしい。
「あのふたり、より戻したのかなー」
「え、じゃあ岩倉さんは?」
「結局本命は綾瀬ってことじゃね?」
「まあ綾瀬さん可愛いもんね。岩倉さんも、綾瀬さんと比べちゃうと……ねぇ?」
今、私と古茶くんとそれから綾瀬さんは、うわさ話の恰好の的だ。まったく、はた迷惑この上ない。
地味だとは言われ慣れているのでダメージは受けない。
けれど、古茶くんと付き合っている、なんて憶測はもとより、私が誰かに劣っている、とか。そんなのはやっぱり、聞いていて気分のいいものじゃない。
というより、なにも知らない他人に『私』を語られるのがどうしても好きになれない。好きになる努力なんてしてないから好きじゃないのは当然かもしれないけれど。



