「やっぱりあのふたりって付き合ってるのかなぁ」


そんな発言を聞きつけて、反射的に足が止まった。


「あのふたり?誰と誰?」


「古茶くんと岩倉さん。最近よく一緒にいる気がしない?」


「言われてみれば確かに……えー、怪しい」


つい最近、似たようなセリフを聞いた気がする。え、なに、流行ってんの?


デジャヴだ。ていうか軽くトラウマだ。


声のしたほうを見てみると、そこには女子三人組が。しかも、よりによって進行方向にいる。


自分の話をしているところを聞いてしまったら、そこの近くをわざわざ通るのも好奇の目に晒されそうでなんかヤダ。どうしたものか……。私は一度、曲がり角に隠れて様子をうかがうことにした。


「──わっ」


曲がった瞬間、ドスッ、と背中に衝撃があり、そこに人がいることに気がついた。


ぶつかったのか。彼女たちに気を取られて見ていなかった。私は謝ろうと、振り向いて顔を上げる。


「すみませ……」


ん、と、最後まで言う前に言葉が止まった。……知ってる顔だったから。


「いて……、なんだ、岩倉さんか」


「……古茶くんって、ほんとどこにでもいるよね」


「えっ、唐突になに?人を暇人みたいに言うのやめてくんない?」