「な、なな、なにすんの!」
「うわっ、ちょ、暴れんな」
タイミングがいいのか悪いのか、私を見つけた古茶くんは、カバンを肩に引っかけ、私の足と背中に手を回し、軽々と私を持ち上げた。
ひょろひょろのからだにそんな力がどこにあったのかはともかく、その状態は、いわゆる、……。……少女漫画にしか許されない、例のアレで。
「私、自分で歩ける、から!」
「でもけがしてんじゃん。絶対安静でーす」
「大したけがでもないし!下ろして!」
さっきまでとは違う注目を浴びているのが嫌でもわかる。屈辱。屈辱!
私が「助けろ」と脅したら、弱みを握られている古茶くんは、渋々助けてくれるんだろうけど。そうじゃないなら、古茶くんが私に構う理由はない。むしろ私たちはいがみ合う関係のはずだから。
……助けてくれる理由もないはずで。
なのに彼は、
「けが人がなに言ってんだよ。いいから大人しく抱えられとけ」
と言って、素知らぬ顔ですたすたと歩き出すものだから、もうわけがわからない。
古茶くんの本性はもうバレてるんだから、私相手にいまさら猫かぶっても無駄だって、まさか古茶くんがわかっていないはずがないのに。
……そんなことを思ってしまうのは、ちょっとひねくれすぎてるかな。かといって、今さら素直になんてなれない。キャラじゃない。
から、私は、考えるのをやめた。



