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「…………」
下駄箱の蓋を開いた私は、いつもと異なるその内部の様子に、唖然として突っ立った。
「あはは、いー気味」
「シッ、聞こえちゃうよ〜、ふふっ」
うしろからクスクスと笑う声が聞こえる。恐らくそいつらの仕業だろう。
下駄箱を開けると、そこにはあるはずのうわばきがなく、代わりに、「バカ」「アホ」「学校来んな」とかなんとか……頭の悪そうな罵倒の言葉がつらつらと書かれた紙の切れはしが詰まっていた。
棒立ち状態になったのはショックを受けたからではない。
「なにこれ……」
呆れを隠せずに、思わずため息をつく。
わかりやすすぎる上に、なんだこのぬるっちい嫌がらせは。こんなものしか思いつかなかったのか。
彼女たちの出来の悪い脳みそではこれが限界だったようだ。
もしくは、たとえ性根が腐っていても、結局のところ、彼女たちも温室育ちだったということだろうか。
念のため言っておくと、私はマゾではない。
こんなことで傷つきはしないが、後片付けはちゃんとめんどくさい。



