古茶くんが目を伏せる。長いまつげが、彼の頬に影を落とす。
「ジャージ脱げって言われない?」
「優等生の権力を最大限に利用した」
「あー。やりそう」
あのうさんくさい笑顔で、キラキラをいっぱい飛ばす彼を想像できる。
普段真面目に『優等生』をしている分、それくらいなら融通が利く、ってことだろうな。
少しだけ開けた窓から風が入る。古茶くんの黒髪が、さらりと風になびいて。髪に隠れていた耳が、一瞬あらわになる。
「……耳にピアスホール」
「あ、見えちゃった?」
古茶くんは、サッと、手で耳を隠した。
「岩倉さんのへんたーい」
「……………………」
「そんな目で見んなし」
俺が滑ったみたいじゃん、なんかリアクションしてみせろよなー。もっと真っ赤になったりしたら可愛げもあったのに、からかいがいのねぇ奴。
可愛げなんて知らないし、可愛げがないことなんて知ってるってば。
「ねぇ、なんでずっと長袖なの?」
「なんでだと思う?」
「……刺青?」
「思考ぶっ飛びすぎ」



