身の危険を感じた私は握られた手を振り払う。それからすっくと立ち上がり、
「自分の立場がまだわかってないのー?バカなの?」
スカートのポケットから素早くシャーペンを取り出し、ペン先を首元に突きつけた。
「……物騒だね、優等生」
「お互い様でしょ、優等生」
──こういうとき、彼は笑う。
作り笑いではなくて、優雅に顔を歪ませて、微笑むんだ。その様子に私は戦慄し、私もまた、笑う。
「脅してんのは私なんだって。私を脅したいならそれなりのネタ持ってくればー?」
「ほんっと、いい性格……」
女子に騒がれるイケメンってのは、悪人ヅラでも絵になるのか、と、不平等を感じながら、
「それはど──も!」
声を張り、蔓延るすべてをかき消した。



