≪以上だよ。恵麻、そっちの世界は楽しい? 私は張り合える恵麻がいないから寂しい……あ、目の前が明るくなってきた……≫

スモフキンのお腹から、ツーツーと機械音がする。

電話が切れたということは、由奈が目覚めたのだろう。

少しだけ寂しく思いながら、エマはスモフキンを離してお礼を言う。

「スモフキンさんのおかげで貴重な情報を得られました。ここまで飛んできてくださいましてありがとうございます」

「うむ。感謝の気持ちは後ほどスペシャルドッグフードにして返すように。では我輩は帰るぞ」

偉そうに胸を張った綿犬が、月明かりの中をフワフワモフモフと飛び去った。

レミリアを鍛えなければと、エマは勇ましい顔をして廊下に戻る。

するとリビングの隣のドアが数センチ開いており、中から明かりが漏れていた。

思わず覗いてしまったら、バルニエ伯爵の横顔が見えた。

「これでいいのか? 君は満足?」

(誰と話しているの……?)

気になって、さらにドアに寄る。

中は寝室のようで、ベッドとキャビネット、ロッキングチェアに暖炉、白い塗装の可愛らしいテーブルセットが見える。