エマがレミリアをなだめてゲームを続けさせようとしていたら、窓辺にふとなにかの気配を感じた。

この二階建ての屋敷には、それぞれの階にリビングがある。

ここは二階のリビングで、カードゲームから抜けて窓に近づいたエマはギョッとした。

白くて丸っこいものがあると思ったら、スモフキンが鼻先をぺったりとガラスに押し当て、中を覗いているのである。

その目つきに可愛げはなく、ポッピィちゃんとして双子令嬢を追ってきたのではなさそうだ。

耳を澄ませば、マナーモード中に電話がかかってきたようなバイブ音もする。

(由奈から電話? 出たいけど、ここで電話に出るわけにいかないし……)

綿毛の下に内蔵されたスマホの存在も、秘密にしろとスモフキンに言われている。

エマは壁際に控えている初老の執事に歩み寄った。

声を潜めて、ワインに酔ったので外の空気を吸いに出たいとお願いしたら、そっとリビングから出してくれる。

案内されたのは二階の廊下の突き当りのドアで、バルコニーに繋がっていた。

「酔いを醒ましたら、自分で戻りますので」