『レミリア様は人見知りなところがあり、ひとりきりの招待客になるのは渋るかもしれません。ですので、シンシア様も一緒にご招待してくださいませんか?』

バルニエ伯爵はすぐに頷いてはくれなかった。

シンシアが婚約したばかりだという噂は知っており、誘えばモンタギュー公爵家に睨まれると懸念している様子であった。

そう言われるのもエマの考えのうちで、すぐに次の提案をした。

『それでしたら、シンシア様の婚約者、ブライアン様もご招待すればよろしいと思います』

『それはいい考えだ。モンタギュー公爵家と交流も図れて、私にとってありがたい話でもある。ぜひそうさせてもらいましょう』

――そんなことがあって、シンシアの分の招待状も届いたのだ。

廊下にまで焼き立てパイのかぐわしい香りが漂っていた。

調理場のドアを張り切って開けたエマだが、男性調理人が後片付けをしているだけで、双子の姿はない。

「リビングで旦那様、奥様とティータイムを始めていらっしゃいますよ」

そのように教えられ、エマは廊下を引き返した。