「今はおふたりでパイを焼いているところなのよ。それは私が預かります」

二通の白い封筒は揃いのデザインで、筆跡も同じ。

差出人はイケオジのバルニエ伯爵となっていた。

「よしっ!」

思わず片手を握りしめて大きな声を出してしまい、メイドに訝しがられる。

「驚かせてごめんなさい。オホホ……」

笑ってごまかしたエマは、双子令嬢のいる調理場へと急ぐ。

これは王城の園遊会で約束した晩餐の招待状に違いない。

シンシアの分まであるのは、エマがそうしてほしいと頼んだからであった。

実は園遊会の終了直後に、エマはバルニエ伯爵に接触していた。

彼の荘園の管理を任されているサノーマン家の娘なので、父がお世話になっておりますと挨拶することはおかしくないだろう。

モリンズ伯爵家の双子令嬢の侍女をしていると自己紹介したら、バルニエ伯爵の方から、レミリアを晩餐に招待するつもりだという話を振ってきた。

レミリアが気乗りしない様子であったのは、こっそり覗き見ていたため知っていた。

それでエマはこうお願いしたのだ。