転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)

バラの棘が頬を掠めるのも気にせず、茂みの間に顔を突っ込むようにして、数メートル先のレミリアたちの会話を聞き漏らすまいと真剣になる。

(お名前のわからないモブ夫人、グッジョブです。おかげで無事に選択肢が出た!)

半月ほど前に王城医務室で見たのと同じような選択肢が、レミリアを背景に、エマの目にだけ見えていた。

①【海のような青い瞳をしていらっしゃいます。吸い込まれそうで、目を逸らしてしまうことをお許しください】
②【美男子だと思います。さぞおモテになることでしょう】
③【青バラのような瞳です。お話は変わりますが、この紅茶がとても美味しくて、どちらで茶葉をご注文されているのですか?】

エマが作成した回答集の1ページ目にもこれを載せておいたし、ハンドパペットでも練習した。

きっとエミリアはそれを思い出していることだろう。

祈るような気持ちでエマが覗く中、レミリアは澄まし顔で言う。

「青バラを観賞していた時、王太子殿下の瞳の色に似ていると思いました。あの、このお紅茶、とても美味しいですね。我が家でも同じ茶葉を買い付けたくなりました。どちらのお店のものでしょう?」