転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)

レミリアからほんの二メートルほど離れた場所では、王太子を五人の男女が囲んで話を弾ませていた。

バラ園の見事さを称えるような会話に聞こえるが、それは美々しい王太子の容姿を褒めるものに変わる。

三十代半ばほどの見知らぬ貴族夫妻が、にこやかに言う。

「王太子殿下とはご幼少の頃から交流させていただいておりますが、想像が追いつかないほどご立派になられましたな。眩しいほどです」

「ええ、本当に。光り輝く貴公子でいらっしゃいますわ。年頃の娘さんたちは気後れして声もかけられないのではないかしら」

オホホと笑った夫人は、急に後ろに振り向いてレミリアに声をかける。

「モリンズ伯爵のお嬢様、こちらに来て一緒にお話しましょう。王太子殿下はわたくしたちにも気さくに接してくださいます。そのように離れたところでモジモジされなくてもよろしいのよ」

レミリアはモジモジなどしていないと言いたそうに冷めた目をしているが、「ありがとうございます」と一礼して会話の輪に加わった。

王太子は銀糸で縁取られた白いジャケットに紺色のズボンをはき、襟元のジャボにはサファイアのブローチを留めている。