転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)

プイッと顔を背け、案内係について歩き出したレミリアは、早速むくれた態度である。

その背を見送るエマは指を組み合わせ、祈るような気持ちでハラハラしていた。

王城のメイドに案内されて控室に入っても、気が気ではない。

従者にもお茶や菓子が振る舞われたが、ひと口も手をつけられず、三十分が経過したところでエマは我慢ならずに抜け出した。

(レミリア様の奮闘ぶりをこっそり覗くだけ。園遊会の邪魔はしないから……)

使用人用の通用口から外に出て、コソ泥のように外廊の柱や庭木に隠れつつ、バラ園を目指す。

風に乗ってバラの香りが鼻に届いたと思ったら、目の前に絶景が開けた。

アーチの門も生垣も、緩やかな高低をつけた散策路沿いを飾るのも、全てがバラだ。

赤、白、ピンク、紫と色とりどりで、花弁の形や大きさも様々である。

日除けの東屋やガーデンベンチもバラの生花で飾られて、なんと美しいことか。

中心部は丸く開けているようで、円卓がいくつか置かれ、美味しそうな菓子がたくさんのせられていた。

しかし座って食べているのは、ごく少数。