「リアルな恋愛を知らなくても、ゲーム内では経験豊富です」

「ゲーム? カードやチェスのこと? なんの関係があるのよ」

「気にしないでください。とにかく始めますよ」

レミリアを強引に椅子に座らせたエマは、丸テーブルを挟んだ向かい側に立つ。


取り出したのは、貴族令嬢風の猫と王子風の犬のぬいぐるみだ。

これらは手作りのハンドパペットで、両手にはめると真面目な顔をして寸劇を始める。

「これはこれはレミリア嬢。お久しぶりです。太陽神の賜りもののようなブロンドの髪と、エメラルドの如き瞳。ああ、なんとお美しい」

犬の王子の口をパクパクさせて、そう言ってから、レミリアに問う。

「このように殿方に声をかけられたら、このレミリアという名の猫ちゃんはなんと返せばいいでしょうか」

「あからさまなお世辞を言われても嬉しくありません」

「はい、ブッブー。不正解です。レミリア様、お顔がほんのり赤いですよ。本当はドキッとしたんじゃないですか?」

「ま、まぁ……そうね」

始める前は呆れ顔のレミリアであったが、恋愛ものの読み物は好きなので、このレッスンにまったく興味がないわけでもないようだ。