有無を言わさず机に向かわせ、便箋と羽根ペンを用意する。

「書きたくない……」

口を尖らせるレミリアの横で、エマは腕組みをして考える。

(レミリア様の場合、きつく叱るのは逆効果。意地でも書かないと言いそう。性根はお優しいから、そこにつけ込むのがいいかもしれない……)

頷いたエマは悲しげな顔を作り、レミリアの肩に手をかけた。

「お茶を断られた時の王太子殿下のお顔が、頭から離れません。すごく傷ついていらっしゃいました」

「そうだった?」

「ええ、もう、海よりも深く。あのお方はこれまで、誘いを断られたことがなかったのでしょう。あの麗しさに加え、なんたって王太子でいらっしゃいますから。プライドを打ち砕かれた男性というのは可哀想なほど落ち込むものです。昨晩はきっと眠れぬ夜を過ごしたことと思います。不眠が続けば、ご病気になられるかもしれません」

「大袈裟よ。でも……そう言われると、傷つけてしまったかもしれないわ。お詫びした方がいいわね。恨まれたら私も気分がよくないし」

羽根ペンを手に取ったレミリアを見て、エマは心の中でガッツポーズをする。