「お母さんも心配よ。もう少し外に出て、出会いを見つけないといけないわ。そろそろ本気で結婚相手を探さないと」

レミリアは嫌そうな顔で黙々と食事をするのみで、返事もしなくなった。

その不貞腐れた態度が、さらに両親を心配させる。

「なんて顔をしているの。せっかく可愛く産んであげたのに、鼻の付け根に皺を寄せるものじゃありません。もっと愛想よくしなさい。シンシアのように」

「こら、なにか話さんか。だんまりは不利な扱いを受けるぞ。シンシアは会話技術も巧みだというのに、お前という娘は。シンシアを見習いなさい」

表情をなくしたレミリアが、朝食を残してフォークを置いてしまった。

シンシアと比較されればされるほど、レミリアは心を閉ざす。

それが自分の心を守る術なのだろう。

そのことに気づいているエマは、レミリアに深く同情し、我慢ならずにツカツカとテーブルに歩み寄った。

「レミリア様を追い詰めるのは、おやめください」

これまでエマが伯爵夫妻に意見したことはない。

雇われ人の分をわきまえており、返事はいつも『はい』のみであった。

そのような自分とは昨日でおさらばだ。